本書は、広島の原爆の“全体像”を記録した科学絵本で、絵で語るページの間に、くわしい解説があります。
証言や取材をもとに描かれた絵は、戦前のおだやかな広島と8月6日のこと、その後の町並みや人々のようすを復元しています。
解説を書いた著者は3歳で被爆しましたが、自身の体験ではなく、多くの資料を調査し事実を記しました。なぜアメリカが原爆を開発したのか、原子爆弾の化学的な仕組みと威力、なぜ日本に投下されたのか、被爆者は45万人にのぼること、人体をむしばむ放射線障害。そして、戦後の原子力発電所の開発や、世界の核軍拡についても。
核の脅威を正しく知り、広島・長崎の惨禍をくりかえさないために、戦争を知らない世代に読んでほしい1冊です。
田村 梓(新潟市立小学校の学校司書。子どもたちと一緒に、本や昔話を楽しんで、27年目になりました。公共図書館や幼稚園でも、子どもと本をつなぐ活動しています。)